なんてね

芸大卒。何も表現していない。

春なのでスニーカーほしい

東京にも春一番が吹いたらしい。

スニーカーが欲しかったので、春一番が吹くのを待っていた。

春一番が吹いたらスニーカーを買う」というルールを決めたのは大学4年のときだった。

とはいえスニーカーはあまり履き潰さないので、去年は買えなかった。運動用の靴と、ファッション系のものが一足ずつあればいい。

今履いているスニーカーは6年前に買ったものだったか。薬局のバイトをしてた1年間はほぼ毎日履いていて、学園祭の準備でついたペンキも残っていた。思い出深いが流石にボロボロになっている。この前の大雪で雪かきをしているときに穴が空いてることに気づいた。

今回はしっかり運動できるようなスニーカーが欲しい。

 

卒業間際の大学4年のとき、春一番が吹いたのは2月14日だった。言わずもがなバレンタインだけど、チョコが溶けるくらい暖かかった。

ちょうど今の恋人と一度別れていた頃で、家に着くまでバレンタインなんて忘れてた。強がりではなく本当に。

一日中一人で過ごした。

昼過ぎから北池袋で演劇を観て、地図を見ないで池袋駅まで歩いた。

土日の都心にも関わらず待たずに座れる、隠れ家のような小さなカフェを見つけて、ほんの少しの柚子酒と、美味しい八女茶を飲んだ。

そのあと人混みに揉まれながら帰路に着いた。

なんでもない日だった。でも春風に押されてか、自分の中から全ての未練が遠ざかっていった。卒業を前にして、大学四年間にできなかったことや、早くも友達と疎遠になっていること、別れた恋人たちのこと。就職活動を始めてからその日まで渦巻いていた後悔と寂しさの全て。

今まで出会ってきた全ての人に忘れ去られても、一人でやっていけるという、漠然とした自信が湧いてきた。

何の根拠もないけれど、少し強くなった気がした。

そして急にスニーカーを買いたくなった。

その日、地元に着いてからコンバースのシンプルなデザインの靴を買った。一目惚れだった。空色のラインがささやかに入っているのがポイントで、ラスト一点だったからサイズは0.5センチ小さいものでも妥協した。

最初はきつかったけど、2年経って足に馴染んでいる。

 

今回のスニーカーのデザインも、惹かれるままに買おうと思っている。できれば最初からサイズの合うものを。